最後まで人であれ
"肯定感"は、Hさんのような老人では、まわりの私たちの関わりによって与えられたり、ときには喪失させられたりしてしまうのです。
老人に食べてもらうこと、つまり生き続けてもらうことのためには、私たちが、「あなたが生きていることを喜んでいますよ」「あなたがこれからも生きていくことを歓迎しますよ」という気持ちをまずもち、それを相手に伝達することが基本であるような気がするのだ。
もちろん、伝達するとは言葉だけで伝えるのではない。
男子職員が歯科医通院を繰り返したような通院介助を通してや、もっと日常的なふれあい通してそれを伝えることができるなら、それが最良の食欲増進剤=生きることへの応援、になっているはずだろうと思う。
老人ホームや家庭から老人病院に入院し、特に理由もないのに、あっという間に亡くなってしまうというケースを何人も見てきた。
老人ホーム職員なら、そんな老人を何人かあげることができるだろう。
彼らは急速に食欲と表情を失い、鼻腔栄養チューブを差しこまれて、それぞれに個性をもった人間としての"彼"や"彼女"であることを、自らやめていくように見えなかったか。